「猫弁」の著者が贈る、
猫と人間のあたたかく切ない絆の物語

猫は抱くもの

The CAT in his arms  Junko Oyama
大山淳子
4月18日発売 本体1,500円(税別)
Amazonで購入

幸せの形は十猫十色

人間と猫は、一緒にいたほうが幸せなのか? それは、めぐりあわせだから
猫が幸せに暮らせる世界ならきっと人間も幸せになれる
猫の集会では大切なことが話し合われている それは猫の幸せについてだろうし、猫の幸せは人間の幸せとつながっている
猫は抱くもの

あらすじ

舞台は、美しい川が流れる東京郊外の町。
そこに架けられた「ねこすて橋」という不名誉な名前の橋では、近隣に住む猫たちが夜ごと集会を開きます。捨て猫、迷い猫、飼い猫。人間を信じる猫、疑う猫、慕う猫、嫌う猫。さまざまな境遇の猫が集まり、それぞれの幸せを模索しているのです。
ある夜の議題は、このねこすて橋に流されてきた一匹の猫「良男」のこと。
青い目が美しいロシアンブルーの良男は、なんと自分のことを「人間」だと思い込んでいました。飼い主である「沙織」のもとに帰りたい一心で必死に歩く良男でしたが、途中で誰かに毒入りのエサを食べさせられ、倒れてしまいます……。良男は沙織に再会し、ともに暮らすことができるのでしょうか。
良男と沙織のエピソードのほか、三毛猫「キイロ」と絵描きの「ゴッホ」、名前を持たない子猫と少女など、猫と人間が織りなす、あたたかく切ない「絆」をていねいに描いた珠玉の物語。
現代社会において、猫が幸せになるのも不幸になるのも人間次第。「猫が幸せに暮らせる世界なら 人間だって幸せになれる」――それぞれの猫の幸せと、それぞれの人の幸せの答えを見つけに、ねこすて橋の集会を覗いてみませんか。

猫を愛する方々からのコメント

せつなくて、哀しくて、そして心温まる猫と人間の物語。
「ねこすて橋」に集まるのはどこかしら心に傷を負った猫たち。そこに関わる人間たちもどこか淋しさを抱え、猫を通じて幸せを求めている。
五章にわたって繰り広げられる猫と人間のエピソードは、猫のヒゲのように四方八方広がるが、猫の舌のひと舐めで絡まった哀しみもほぐされ、やがては丸くなって眠る猫のようにきちんとあるべきところに納まる。絶望や怒り、淋しさもやがて静かな希望をたたえた未来へと昇華していく。

大久保 京(猫本専門書店「書肆 吾輩堂」店主)

猫本専門書店 書肆 吾輩堂
明け方や夕方になると、近所の駐車場や空き地では猫の集会が開かれていた。飼い猫たちも外の世界へと気軽にでかけていた時代……30年前の東京はそうだった。
この小説に出てくる風景は、そんな私の記憶の中の風景にオーバーラップする。
当時の空気感、近所に住んでた猫の顔、猫好きおばさんの顔……。私たち人間と猫との相互依存な関係は途切れることなくもっとずっと昔から続いてきたんだ。
物語中に描かれる猫と人間の微笑ましさ、時に現れる人間の身勝手さに一喜一憂しているうち、あっという間に読み終わってしまった。私もあの子猫に「おひさま薬」をもらったような、あたたかいものが胸に残った。

石原さくら(猫写真家/ブリーダー)

sakuraquiet Photo&Cattery
私は外で暮らす猫ばかり撮っている少し変わったカメラマンだ。
外猫しか撮らないのは、家猫より数倍表情が豊かなのを知ってしまったから。だから、読み進むうちに良男の表情に少しずつ、しかし確実に訪れる変化を感じて寂しさを覚えた。
一方、穏やかなストーリーの中で「セリフを失っていく良男」に安堵しグッと来てしまった。どちらも幸せで、どちらも不自由なのだから、猫として猫らしく天寿を全うして欲しい。
読後、さっきまで猫達と話をしていたかのような錯覚に陥った。
今夜猫の集会を見かけたら、そっと聞き耳を立ててみよう。

星野俊光(猫写真作家)

Cats on the shore ~海辺に生きる猫たちの記憶~
全五話から成り立つ物語には、人や猫の織りなすいくつものエピソードが盛り込まれています。話が変わるごとに場所は変わり、また時には時系列を大きく遡るので戸惑いながら読み進むと、やがて、物語は「ねこすて橋」へと流れ着きます。なるほど、そういうことだったのかと得心しながら、最後まで一気に読んでしまいました。
物語に登場する人も猫も、一度は大事なものを失い、しかしやがて新しい何かを見つけて、それぞれの道を歩き始めます。読み終えて、清々しい気持ちになれた作品でした。

kiyochan(猫写真家)

だから東京が好き! 街のねこたち
著者プロフィール

大山淳子(おおやま・じゅんこ)

東京都出身。2006年『三日月夜話』で城戸賞入選。2008年『通夜女』で函館港イルミナシオン映画祭シナリオ大賞グランプリ。2011年『猫弁 死体の身代金』でTBS・講談社第3回ドラマ原作大賞を受賞しデビュー。猫弁シリーズに『猫弁 天才百瀬とやっかいな依頼人たち』『猫弁と透明人間』『猫弁と指輪物語』『猫弁と少女探偵』『猫弁と魔女裁判』、他著に『雪猫』『イーヨくんの結婚生活』(以上、講談社)『あずかりやさん』(ポプラ社)がある。飼い猫の名前は「いなもと」。