東京で挫折し、愛媛の実家で療養のような日々を過ごす・和樹。2020年のオリンピックが東京に発表されたとき、寡黙な祖父から糊付けされたままの一通の古い封筒を預かる。「これは……」。開くと中から古い写真と「私たちの約束をここに埋めました」と書かれた手紙が入っていた。祖父の“果たされなかった約束”を探しに、もう一度東京に行くことにした和樹。そこで出会ったのは、かつて少年少女だった5人のおじいさん、おばあさんと、ふふと感じよく笑う小さな秘密を抱えた体育教師・麻帆だった。
「守り続けてきた」祖父が秘めていた「手の届かないものを、追い続ける。すべてを失くしてもいい、と思えるくらいに」という思い。そして叶わなかった夢の先には何があったのか。6人の辿った小さくて偉大な歴史を知った和樹と麻帆は、ある行動を起こす。果たされなかった約束を今、果たすために——。
読後、空を見上げると心の中を爽やかな風が吹き抜けた。果たされなかった約束のバトンは世代を超えて繋がれていく。知っているようで知らない大切な人のこと。この小説を読むと大切な人に会いに行きたくなります。
(紀伊國屋書店玉川高島屋店・河井さん)
目標や約束のひとつひとつが現在を動かし、未来を作っていく。過去に眼を背けてばかりもいられないし、立ち止まってもいられない。いま自分にできることを精一杯やりたい、と気力がみなぎってくるような、晴れやかな小説でした。
(七五書店・熊谷さん)
人は人に傷つけられることの方が多いのかもしれない。それでも人を信じたい、そう思える一冊でした。青空はみていて清々しくなる、清々しいという言葉がぴったりな物語。
(丸善&ジュンク堂書店渋谷店・勝間さん)
これまでの中村航と違う、まさに全年齢にむけてのメッセージがつまった一冊でした。がむしゃらに生きてきた世代のバイタリティが今これからを頑張って生きていく世代に受け継がれる襷の一本に本書はなると思います。それぞれが出した自分への手紙が特に印象的でした。これからも読み直す一冊になると思います。
(あおい書店川崎駅前店・大西さん)
夢がなければ生きていけない。でも夢だけじゃ生きていけない。1964年のオリンピック。あの時代の若者たちが抱いていたひとつひとつの夢は、どうなったのだろう。夢も仕事も生活も、すべて失くしてしまった和樹が、故郷の祖父から託された、「過去の夢のかけら」。夢のかけらをたどる中で、新しい一歩を踏み出すまでの物語。大切なものを失くしても、新しい物語、新しい約束をもてたとき、人はまた立ち上がっていくんだな。日々の生活で夢さえ忘れていた自分の心にいくつかの灯をともしてくれた。
(名古屋精文館書店中島新町店・久田さん)
小さな希望がやがて大きなうねりとなり登場人物たちと共に読んでいる私たちを巻き込んでクライマックスを迎える!この興奮はなんなのだ!やはり中村航は最高だ!
(明正堂アトレ上野店・増山さん)
くら~~い主人公(暗くなるのも仕方がなかったというのは後々わかるが)の登場に、どうなることかと読み始めたが、麻帆先生の魅力にやられながら(笑)読み進めました。金儲けに目が眩んで失態を続けるどこかのオリンピックとは違って、喜びや希望、夢、笑顔があふれる幸福感がいっぱいの練馬オリンピックの模様を伝える最終章は、読んでいて自然と笑顔になってしまいました。
(ジュンク堂書店名古屋ロフト店・石本さん)
ハードルを乗り越えて、そうしたら誰かが引っ張ってくれる感覚が。きっとそこまで乗り越えようとする部分までが自らの葛藤。勢いをつけたらそこからは自然のパワーみたいなものが働くのだろうか・・・まっすぐに生きることしか出来ない人と、力を抜きつつ程よく生きる人。さて、自分はどのタイプ?みんな悩みはつきない。大小抱えながら、それでも青空は待っていてくれるのかな?と思うと安心しました。すっごく爽やかにこの本は私に色々なことを教えてくれた気がしました。
(ジュンク堂書店広島駅前店・石田さん)
和樹の抱える傷が何なのか気になりながら読みました。過去の出来事が明らかになった時、あの祖父の孫だからこそ最後まで逃げずに、自分の心をすり減らしてまで必死になって終わらせたのだなと妙に納得しました。そして、帰る場所があるってとても大事だと思いました。物語を通して、私自身、両親や祖父母のことを一体どれだけ知っているのだろうと考えさせられました。今のことは知っているけれど、昔の話を聞くこともあまりないので、これを機に知れたらいいなと思いました。五十年も前の友情や淡い恋心に何とも言えない切なさを感じました。P163の「新しい物語をもてたとき、人間は立ち直るんじゃないかな。・・・バーを越えられなくたってね、その先には行けるんだ」という言葉にぐっときました。
(旭屋書店新越谷店・猪俣さん)
オリンピックという大きなイベントが世代を超えた人達にとっての架橋となった。当時叶えられなかったオリンピックという夢が、時代を超えて形になる、そして、そんな架橋は現在の世代の2人にとっても大きな架橋として2人を結び付けた。
(芳林堂書店高田馬場店・飯田さん)
何から何まであざとい作品だと思います。そして、これは最大級の賛辞です。完全に涙腺を操作されました。でも、それは全然やなことではなかったし、それに乗っかることを僕は望んだのだと思います。それくらいシンプルでまっすぐな物語だったから。まず、舞台そのものがあざといですよね。フィクションである小説をいかに読者のリアルに近づけるかというハードルを設定だけで超えてしまってるのですからね。この物語を読んだら誰もが何か約束をしたくなるし、手紙を書きたくなる。「オリンピックを一緒に見よう」って。すごくシンプルなメッセージだけど、そこには相手を大切に思う気持ちとか離れがたい思いが込められている。ここが劇的になり過ぎないところが中村さんの素敵な所だなって思います。そして、物語としていくらでもビルドアップ出来るのに、分量的に読者の感情を分散させずに感動させるという一点に持っていくことを貫いてますよね。オリンピックで、陸上で、数ある競技の中で、棒高跳びを選択したこともニクいなって思います。スポーツや音楽のようなナマモノと文章というのは基本的に相性が悪いはずなんです。文章にするというのが記録することである以上、瞬間、瞬間の動きを絶対に追えないので。ただ、棒高跳びって確かに観衆は総じてある瞬間に息をのむ。止まる瞬間があるんですよね。そこは文章が唯一と言っていいくらいリアルを捉えられるポイントなんだなと、読んでいて気付きました。息を短く吐きだし~からの「和樹はその先に向かう。あのバーを越えて、その先に向かう。」この一連は色褪せないPOPソングの名フレーズといった感じでしょうね。このわかりやすさというのはやっぱりマスに訴えかけるにはすごく重要だし、力を持ってくる筈です。という訳で、もうあざといことだらけですが、売るという視点で考えたときには本当に押し出しやすい作品なので、自分の好みに必ずしも合致する訳ではないですが推し甲斐はあります。そこそこ売れた、で終わらせたくはないので、オリンピックの話題と意識的に絡めながら、話題性を保って売っていきたいです。宜しくお願い致します。
(紀伊國屋書店西武渋谷店・竹田さん)
キレイな青春小説でした。過去に囚われながら祖父の思い出を探すことで、次第に自分の過去に向き合って行く姿、かつての陸上の祖父の教え子たちのそれぞれの思い出と、その後の人生、そしてタマホとの恋模様。どこをとっても素敵で前向きになれる爽やかさで、とても楽しめました。
(谷島屋浜松本店・中土居さん)